CMV:サイトメガロウイルス
ALS:筋萎縮性側索硬化症
ALS:筋萎縮性側索硬化症
ガンシクロビル点眼剤
ガンシクロビルは1980年代に実用化された抗ウイルス薬で、単純ヘルペスウイルスや帯状疱疹ウイルスなどのDNAウイルスに対して強い抗ウイルス作用を示します。ヘルペスに対してはアシクロビルなど他にいくつかの抗ウイルス薬がありますが、これらの抗ウイルス薬はサイトメガロウイルスに対しては効果がありません。これに対し、ガンシクロビルはサイトメガロウイルスに対して強い抗ウイルス作用を示すため、点滴靜注剤がサイトメガロウイルス感染症の特効薬として使用されています。単純ヘルペスや帯状疱疹ウイルスの治療薬としては承認されていません。
一方、ガンシクロビルの点眼剤は欧米では角膜ヘルペスの治療薬として承認され、使用されています。日本では承認されていません。ガンシクロビルの持つ抗ウイルス作用を改めて考察すると点眼剤は以下の眼科のウイルス性疾患の治療薬となり得ます。
一方、ガンシクロビルの点眼剤は欧米では角膜ヘルペスの治療薬として承認され、使用されています。日本では承認されていません。ガンシクロビルの持つ抗ウイルス作用を改めて考察すると点眼剤は以下の眼科のウイルス性疾患の治療薬となり得ます。
サイトメガロウイルス角膜内皮炎
サイトメガロウイルスはほとんどの成人で潜伏感染しており、不顕性の状態にありますが、免疫低下などのきっかけで、種々の臓器で増殖し、炎症を起こします。眼の場合は、角膜内皮で増殖し、角膜内皮炎を惹起します。サイトメガロウイルスによる角膜内皮炎は、進行は遅いものの自然治癒することはありません。放置すると角膜浮腫、角膜混濁を生じ、最終的に失明するに至ります。
現在の治療法としてはガンシクロビルを全身的に点滴静注するかあるいは病院の院内処方で点眼液を作成し点眼するかのいずれかもしくは両方によります。我々はサイトメガロウイルスによる角膜内皮炎を対象とした点眼剤の臨床試験をすでに終了しており、良好な結果を得ています。現在、製造販売承認の申請準備中です。2025年中に申請し、2026年には販売開始の予定です。なお、本剤は厚労省よりオーファンドラッグの指定を受けています。
現在の治療法としてはガンシクロビルを全身的に点滴静注するかあるいは病院の院内処方で点眼液を作成し点眼するかのいずれかもしくは両方によります。我々はサイトメガロウイルスによる角膜内皮炎を対象とした点眼剤の臨床試験をすでに終了しており、良好な結果を得ています。現在、製造販売承認の申請準備中です。2025年中に申請し、2026年には販売開始の予定です。なお、本剤は厚労省よりオーファンドラッグの指定を受けています。
ヘルペス角膜炎
ヘルペスウイルスは眼組織では主として角膜上皮に感染し、角膜炎を惹起することが多いのですが、虹彩、毛様体に感染し、前部ブドウ膜炎などを起こすこともあります。
治療としてはアシクロビル眼軟膏を使用することが、日本ではほとんどです。アシクロビル眼軟膏の効果はすぐれていますが、軟膏であるため、眼への点入が容易ではなく、また高頻度で角膜びらんの副作用を発現するという問題があります。
ガンシクロビル点眼剤は軟膏剤と全く違い、点眼し易い製剤であり、角膜びらんといった障害性も全くありません。また、ガンシクロビルはアシクロビルと比較してヘルペスに対する抗ウイルス作用が強いので、有効性は遜色ありません。本剤はすでに臨床試験を終了しており、ヘルペス角膜炎の効能でも申請準備中です。
なお、上記二つの適応症についてはロート製薬株式会社と共同して開発を行っています。
治療としてはアシクロビル眼軟膏を使用することが、日本ではほとんどです。アシクロビル眼軟膏の効果はすぐれていますが、軟膏であるため、眼への点入が容易ではなく、また高頻度で角膜びらんの副作用を発現するという問題があります。
ガンシクロビル点眼剤は軟膏剤と全く違い、点眼し易い製剤であり、角膜びらんといった障害性も全くありません。また、ガンシクロビルはアシクロビルと比較してヘルペスに対する抗ウイルス作用が強いので、有効性は遜色ありません。本剤はすでに臨床試験を終了しており、ヘルペス角膜炎の効能でも申請準備中です。
なお、上記二つの適応症についてはロート製薬株式会社と共同して開発を行っています。
ME104点眼剤
ME104はオリゴ糖を修飾した化学構造をしており、低分子ですがヘパラン硫酸に近い化合物です。ヘパラン硫酸の一種であるヘパリンと同様に血流凝固を防ぐ作用を有しており、抗血液凝固薬として注射剤が承認され、使用されています。
ヘパリンなどの硫酸基の多いヘパラン硫酸は、生体内で種々のタンパクと結合し、その生理活性に影響を及ぼします。例えば、ある種の成長因子の活性を増大させ、組織の修復を促すことはよく知られています。我々はヘパラン硫酸に近い ME104が角膜上皮細胞の伸展、増殖を促進する活性を有することも見出しています。この発見をもとに新規の角膜障害治療薬の特許を出願し、2024年6月に登録されています。(特許第 7514033 号)
ヘパリンなどの硫酸基の多いヘパラン硫酸は、生体内で種々のタンパクと結合し、その生理活性に影響を及ぼします。例えば、ある種の成長因子の活性を増大させ、組織の修復を促すことはよく知られています。我々はヘパラン硫酸に近い ME104が角膜上皮細胞の伸展、増殖を促進する活性を有することも見出しています。この発見をもとに新規の角膜障害治療薬の特許を出願し、2024年6月に登録されています。(特許第 7514033 号)
遷延性角膜上皮障害
角膜上皮は増殖、修復能が旺盛で、障害を受けても速やかに治癒することが多い組織です。しかしながら障害が遷延化し、難治性の角膜障害となる場合も少なくありません。特に、角膜に分布する知覚神経が障害されると角膜障害が遷延化されることが知られており、神経障害を伴う角膜障害は
Neurotrophic
Keratopathy(神経栄養性角膜障害)と呼ばれます。角膜は知覚神経が発達しており、角膜内の神経は単に刺激情報を脳に伝達するだけでなく栄養因子を分泌するなど、角膜障害に対し防御的に関与していると考えられています。
現在、日本では Neurotrophic Keratopathy をはじめとする遷延性の角膜障害に対する治療薬は存在しません。角膜上皮障害に対しては、角膜上皮細胞の増殖を促進する各種成長因子が有効であると思われますが、細胞増殖を強く促進する物質は同時に角膜の血管新生を促すおそれが多分にあります。角膜に新生血管が生じると著しく視力を損なうことになります。ME104の角膜上皮細胞に対する増殖促進作用は Epidarmal Growth Factor に比べると弱いものの、血管新生を誘導する作用はほとんどないと考えられ、角膜上皮障害治療薬として最適のプロフィールを持っていると言えます。
現在、日本では Neurotrophic Keratopathy をはじめとする遷延性の角膜障害に対する治療薬は存在しません。角膜上皮障害に対しては、角膜上皮細胞の増殖を促進する各種成長因子が有効であると思われますが、細胞増殖を強く促進する物質は同時に角膜の血管新生を促すおそれが多分にあります。角膜に新生血管が生じると著しく視力を損なうことになります。ME104の角膜上皮細胞に対する増殖促進作用は Epidarmal Growth Factor に比べると弱いものの、血管新生を誘導する作用はほとんどないと考えられ、角膜上皮障害治療薬として最適のプロフィールを持っていると言えます。
ドライアイ
ドライアイは文字通り、涙液の減少などにより、角膜が十分に保護されない状態で角膜障害の一種です。角膜上皮細胞が大きく障害されている状態ではありませんが、目の不快感や見えにくさを生じます。近年、パソコンやスマホを使う機会が多くなったこともあり、患者数は日本で約
200
万人と言われており、増加傾向にあります。ヘパラン硫酸には組織の構築や修復を促す作用があると言われており、ME104点眼剤はドライアイのような軽度の角膜障害に対しても角膜組織の維持や修復作用があると考えられます。
クタメシン
クタメシンはシグマ受容体アゴニストです。シグマ受容体は細胞膜上ではなく主に小胞体に存在する受容体です。その機能については未だに不明な点も多いのですが、基本的にATP
の産生を増やすなど小胞体‐ミトコンドリアの賦活化に関与し、細胞のダメージを軽減する方向に働くと考えられています。特に増殖能がほとんどない神経組織においては、種々のストレスに対しシグマ受容体アゴニストは防御的に作用します。種々の化合物がシグマ受容体に作用することが報告されていますが、その多くは選択性が低く、シグマ受容体にのみ選択的に作用する化合物はクタメシン以外にはほとんどありません。クタメシンは種々の神経疾患の治療薬となり得ますが、現在、カナダのベンチャー企業によって以下の神経疾患の治療薬として開発されています。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動神経が徐々に障害を受けることにより運動障害を来たす神経難病です。シグマ受容体アゴニストは神経の中でも特に運動神経の障害からの回復に寄与するという報告がなされています。